はじめに
サンリオ展に行ってきました。六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリー、52階です。チケットは当日券で入れました。全日時指定制ですが、平日の日中に行ったこともあり、現地で時間枠を取るだけで並ばずに入場できました。
きっかけは、サンリオのデザインへの考え方を知りたかったことです。キャラクターをどう設計し、どう世界に広めてきたのか——その哲学が気になっていました。帰ってきてから会社の歴史を調べたら、デザイン以前の話が予想外に面白くなってきました。それは後ほど。
六本木ヒルズへ
多摩地域から車で向かいました。
駐車場は森ビル下の機械式です。特殊なタイプで、初めてだと少し戸惑います。サイドミラーを畳んだ状態で機械式の中に入り、機械の中にはいったのち、車の鍵を締め、外に出る流れです。すると車が車輪のところのローラーで真横に移動し、格納される仕組みです。はじめてみました。
森タワーに入ると、エレベーターで一気に52階へ。展望台と同じ階です。

入場料は平日2,400円。会場内はそれほど混んでおらず、時間指定が効いているのか、ゆっくり見られる密度でした。
展示:スヌーピーから始まった60年

展示は年代順の構成です。冒頭に登場したのが、スヌーピーでした。
サンリオの展示がスヌーピーから始まることに最初は「?」となりましたが、これが伏線でした。
1960年代後半、まだ自社キャラクターを持っていなかったサンリオは、アメリカのピーナッツシリーズの日本ライセンスを扱っていたのです。
展示を見ていると、グッズだけでなく出版物もずらりと並んでいました。やなせたかしの詩集をはじめ、外部アーティストの絵本など、サンリオが版元として様々な作家と組んでいたことがわかります。そしてその流れが、やがて社内のアーティストによる作品へとつながっていきます。外から学んで内製化する——キャラクターと同じ動きが、出版でも起きていたようです。アンパンマンの作者がサンリオから本を出していたとは知りませんでした。

雑貨、キャラクター、出版と、やっていることの幅の広さに少し驚きます。

これがいちご新聞の創刊号です。表紙がスヌーピーでした。出版事業の流れの中で生まれた雑誌で、創刊当時のサンリオにとってスヌーピーが看板だったことが、この一枚からわかります。
海外風デザイン・メルヘンの時代

パティ&ジミー

パティ&ジミーの商品決裁用ラフスケッチです。「当時はパソコンがない時代だったため、すべて手書きで作られました」という解説がついていました。文字もイラストも、デザイナーが一枚一枚手でまとめていた時代です。
このキャラクターを見て気づいたのは、すでに口がないこと。口を描かないデザインは、ハローキティよりも前、パティ&ジミーの時点で確立していたようです。
マイメロディ

ハローキティ

パネルの横には「ストーリーを持たない」という見出しがありました。ハローキティはあえてストーリーを持たせないデザインで作られた、との解説です。国籍・年齢・設定を与えないことで、見る人が自由に自分を重ねられる——それが世界に広がった理由だったようです。
コーナーの途中に、レディー・ガガがキティちゃんの格好をしてきたときの衣装レプリカが展示されていました。思わず笑ってしまうスケール感で、これが「世界に広がった」の実態なのかと妙に納得しました。

等身大ぬいぐるみ
会場の中央には、等身大サイズのぬいぐるみが並んでいます。キティちゃん、クロミ、マイメロディ、ポムポムプリン、リトルツインスターズ。




ポムポムプリンのそばに「サンリオキャラクター大賞2026 1位」のプレートが立っていました。「しょうじょう」の文字と、「これからも いっぱいたべて げんきに すごしましょう」というメッセージ。ポムポムプリンらしい。
物販

ぬいぐるみと図録を買いました。

ぬいぐるみはピンクのキティちゃん。コースターはカフェで付いてきたものです。図録は展示の内容がまとめてあって、帰ってからも読み返せます。
コラボカフェ「THE SUN & THE MOON」
展示を出たあと、同じフロアにあるカフェ「THE SUN & THE MOON」へ。サンリオ展に合わせたコラボメニューが出ています。約30分。

ポムポムプリンのカルボナーラうどん(1,950円)。黄色いお皿の上にポムポムプリン型のチーズが乗っています。

ハローキティのバーガー(1,980円)。52階からの眺めが窓越しに見えます。東京の街を一望できる席で食べるキティバーガーは、なかなかの体験でした。

注文するとコースターが付いてきました。白とピンクの2枚組で、周囲にキャラクターが並んだデザインです。
帰ってから調べた:山梨の絹問屋から60年
展示を見ながら「スヌーピーが最初というのは面白いな」と思っていたのですが、帰ってから会社の歴史を調べたら、もっと面白いことになっていました。山梨の絹の会社から始まっていたとは、思ってもみませんでした。
サンリオのそもそもの起源は、山梨シルクセンターという絹の会社です。山梨県の絹産業振興を目的とした団体を、山梨県の元職員だった辻信太郎さんが県庁を辞めて1960年に株式会社化しました。資本金100万円。出資者に山梨県知事・副知事・商工会議所会頭が名を連ねる、地方産業振興らしい出発点です。
ところが創業まもなく、韓国向け絹製品の輸出取引で500万円の不渡り手形を掴みます。資本金の5倍の債務。辻さんが選んだ打開策が、百貨店前の路上販売でした。問屋価格と小売価格の差に着目して、3ヶ月で完済したといいます。
その後、雑貨販売へと転換していく中で、あることに気づきます。キャラクターが描かれた商品は、そうでないものよりはるかに売れました。物を売りながら、キャラクターの力を肌で知ったのです。
その経験から1968年、スヌーピーの日本ライセンスを取得します。ライセンスを管理する裏方として関わる中で、IPビジネスの仕組みを学んでいったのではないかと思います。
キャラクターを作る側になろうとしたとき、最初は外部のアーティストに頼っていました。やなせたかしをはじめとする作家たちと組みながら、キャラクターづくりのノウハウを蓄積していきます。出版でも同じことが起きていたように、外から学んで内製化する——そのパターンがここでも繰り返されます。社内でキャラクターを生み出せる体制が整ったとき、生まれたのがハローキティでした。
そして1974年、ハローキティ誕生。ライセンスを払う側から受け取る側へ完全転換します。
絹 → スヌーピー(学習)→ キティ(収穫)
この流れを知ったあとで展示を思い返すと、なぜスヌーピーから始まっていたか、筋が通ってきます。海外テイストのキャラクターが多かった時代についても同様です。あの「メルヘン」と呼ばれるスタイルは、他社との差別化として意図的に選ばれたものでした。今でいう「かわいい」の原型を、海外風のイラストで表現しようとしていた時代です。
ちなみに、辻信太郎さんは戦争を経験して「みんな仲良く」を事業の根底に据えた人でもあります。かわいいを武器に世界平和を本気で目指した、というのが伝わる展示でした。
まとめ
「かわいいを売る会社」だと思っていたサンリオが、山梨の絹問屋から倒産寸前を経て、外部版権で学びながら自社IPを育ててきた——そういう経緯を知ると、「カワイイ帝国」という言葉の重みが少し変わります。
展覧会のタイトルどおり、これはニッポンのカワイイ文化の60年史でもあります。
「FINAL ver.」とある通り、このシリーズの最終版です。会期は2026年6月21日まで。
| 項目 | 内容 | 公式 |
|---|---|---|
| 展覧会 | サンリオ展 FINAL ver. ニッポンのカワイイ文化60年史 | 公式サイト |
| 会場 | 森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階) | 会場ページ |
| 会期 | 2026年4月9日〜6月21日 | ─ |
| 開館時間 | 日〜金 10:00〜18:00 / 土・祝 10:00〜20:00 | ─ |
| 入場料 | 平日 一般2,400円 / 土日祝 一般2,800円 | ─ |
| チケット | 全日時指定制・当日券あり | ─ |
| 展示滞在時間 | 約1時間〜1時間半 | ─ |
| カフェ | THE SUN & THE MOON・約30分 | メニュー |
| 駐車場 | 森ビル下の機械式駐車場(特殊なタイプ) | ─ |
